えーここで中継の途中ですがマルチさんからの緊急記者会見を行います。
現地のリポーターさんどうぞ!!
「ハイ!私は今神戸市北区二丁目85の5清水翔平さんの部屋にいます。会場にはピリピリとした雰囲気が漂っており・・・あっ!ついに現れました!今回の事件の渦中の人物、マルチさんこと清水翔平が現れました!!」
どうも。清水翔平です。この度は皆々様の多大なる協力、助言に非常に助けられました。まずはその事実に心からお礼を申し上げたいと思います。
ではここで、私が今想う事を率直に話させて頂きます。当然、私が今から話そうと思うのは私のこの夏唯一であろう、パヒュームとの恋の情事についてであります。
現状を率直に申し上げると、現在の私とパヒュームとの仲はほぼ完璧に硬直状態にあるといえます。それが私をここ最近常に悩ませ続けてきた事でありました。
まず、正直なところ、私とパヒュームのソリが合わず、こうした結果になるであろうことは私は声をかける前からわかっていました。勘違いしてもらいたくないことが一つあります。それは私はパヒュームを諦めたわけでも、好きでなくなったわけでもないということです。しかし、私はこの恋を忘れようと思います。この想いから逃げるのではありません。一度ゼロに戻して、もう1度まっさらなキモチからパヒュームという一人の女性と今後知り合っていきたいということです。
この選択は非常に現状に即した冷静な決断だったと自分では考えています。なぜなら、熱い気持ちを胸に閉まったまま、うわついた気持ちのまま、ただパヒュームの気を引くためだけにこの夏を過ごす訳にはいかないからであります。
思い返せばこの三日間、様々なことがありました。まだ書き終えていない波乱万丈な事実もありますが、それは以後更新していくことになります。
そう、思い返せばこの三日間、様々な事を思いました。
ただそれらを一貫して一つだけ言えることがあります。
俺は一度だって逃げなかったし、逃げるという弱さを失ったという事であります。
私のロマンの一つに、「敢えて敗者である事の哀愁」とゆうものがあります。
これはわかりやすくいえば、銀杏ボーイズやサンボマスターが高らかに歌うところの精神です。つまり、負け犬の美学。
数々の戦いにおいて敗北した自分を、ドラマみたく塗りたくって美化するという事です。しかしそれらはすべて後ろ向きな力であり、思い出でしかない。
後で笑えたとしても、未来には何一つ繋がらない。
愚かさを何と呼ぼうと人の勝手であり、また、愚かさにも数々の種類がある。
「今こうするのが正解」とか「今こうするのは失敗」とか、
「前あんなことしたのは失敗だった」とか「前あそこであぁしとけばよかった」とか。
そういった理論的な最善の追求みたいなモンが俺の頭ん中でぐるぐる回りました。
しかしそれら全ての理屈はそれを実行する勇気がなければ単なる逃げ口上にすぎません。
闘って失った右腕を惜しむ戦士がいましょうか。
自分の弱さと真っ向から闘って犯した過ちに理論で裁くことができましょうか。
俺はパヒュームのことを好きだったのか、嫌いだったのか、それらのことは今となってはわかりません。ただ一つ言えるのは、俺が昨日より肩の力を抜いて彼女と接していこうという思いだけです。
俺が丹精込めて送ったメールに気の抜けた調子で返信するあなたに失望するつもりもなければ、女という生き物全体にいつか復讐を誓ったり、女性不審に意識的に陥るような気もさらさらありません。
そうした、まず自分ありきの感情のおしつけからはやっと今開放された気がします。ただ、時期が悪かった。ただ、相性が悪かった。ただ、俺が悪かった。
そんな原因を思い浮かべるのは何も今初めてのことではありません。
きっと俺はこんな思いをするのだろうなと、貴方を追いかけながら俺は思っていたのです。ただ、それでも俺を動かせたのは、混沌とした感情の中で失くした純粋なキモチを疑ってばかりいるのではなく、その先にあるものを見極めたかっただけなのです。「本当は好きじゃなかったんかもしれん」とか「俺にはいろんな障害があるから」とか、そんな腑抜けた思いでこれ以上俺を汚したくなかった。
ただそれだけだったのかもしれません。
理屈というスポットライトをあててしまえば、うつろいやすい恋愛感情など、白日の下にさらされてしまえば単なる風船にすぎないようにも見えます。
精一杯馬鹿みたいに青空目差してふくらませた風船。
それを低い位置におしつけていくのは辛い。
報われるのでなくば、せめて割って欲しい。
俺はまたこの出来事を美化しようとしているのかもしれません。
だが俺はこの出来事を「失敗」と呼ぶつもりはないし、ましてや「成功」と呼ぶつもりもありません。なぜなら、俺は一位でゴールインする事はなくとも、完走したマラソンのランナーであるからです。
物語はまだ続きます。ただ、それだけのことです。
ただ、今のごちゃまぜになった思いをここに書き残しておきたかった。
それだけのことでした。
最後に、最も物語りはまだ続くのですが、俺がここまでやれたのは俺の人騒がせな恋に今まで付き合ってくれた2人がいたからであります。
3人で笑いながら話したあの作戦は果たされなかったけれど、だからこそ俺にとって本当に大切な宝物としてしまっておこうと思います。
以上。これ以上書くと嘘になってしまいそうなのでここらへんで今夜はお別れを告げさせて頂こうと思います。
あでぃおす。