拝啓JP様。
そろそろ秋がやってきましたね。
「児島あき」の「あき」ではないので安心してください。
昨日、帰宅してから一時間勉強したのち3時間オナニーし続けた深夜三時。疲れ果てた体を横にして目をつむろうとした瞬間、私は窓の外の夜空に広がる月と朧の大草原を目にしました。
そう。そんなあなたの好きそうな風景を、私は5秒間ほど眺めた後、私の意識は望まずしてあれほど望んだ夢の中に溶け込んでいきました。
望まずして見た夢は、さっき見た夜空の雲海の上を2人で飛行機に乗る俺でした。
今思い出せば、俺がなんかずっと廊下で「マルチ死っ・・ねや!!」と暇があれば叫んでいたクソヤロウな貴方と友達になったのは、貴方が俺の日記の文章を「美しい」と言ったときでした。
私はいつしか様々な障害を乗り越えたりやっぱり乗り越えられなかったりした後、昔とはすっかり変わった人間になってしまいました。
しかし、貴方と初めて話したレッチリのバイザウェイとその思い出だけは、どうにも忘れそうにありません。
拝啓JP様。つきましては、今回の一年間の責務本当にお疲れ様でした。
いろんなことがありましたね。
私はいつしか賢く生きる方法を覚えました。そして同時に、あの頃思っていた「青春」の理想像を失いました。
未だにそれを持ち続ける貴方に私は憧れはしません。
それもまた自分の選んだ道でしたから。
しかし、そんな貴方の事を私は嫌いではありません。
この一年間、いろいろなことがありましたね。
時に私はあなたを裏切りました。
今、この一年が俺達に与えた影響を喜ぼうとは思いません。
貴方がどうかはわかりませんが、俺達はまた倒さなければならない敵を増やしたのではないでしょうか。
後悔先に立たず。それならば貴方とともに走った前半部分を思い出して無理にでも笑うとしましょうか。
どちらにしても、私達はもう、あの日思い描いた高校生活を、終えようとしているのですね。
聞くところによると、どうやら私と貴方は別々の道を歩む事になるようですね。たとえそれが互いにどんな道であろうとも、俺達はきっと潔く別れを告げあうことになるのでしょう。私達はそんな間柄だったはずです。
それがいま、どこか安心するようでもあるし、何か間違ったようでもある。
俺の夢を語ります。
「紅の豚」が乗ってたようなボロくさい飛行機で大切な人と雲海の上で月を横切って旅をする。今日本の文学が失った「人の奥深くを知る文章」を
書く。ブロンド美人と結婚する。
どうですか?昔語った夢より少しは具体的になったのではないでしょうか。
ニーチェはかつて「神は死んだ」といいました。
それならば、私は全てのものは死ぬし、そして死ぬべきであるのだと思います。しかうして、私は思うのです。
私達の「青春時代は死んだ」と。
たとえ輝かしい大学生活が待っていたとして、あれほど欲したセックスをしたとして、恋人を愛し愛されたとして、クビキリストが復活したとして、
俺達2人の前に、あの頃のヒーローが舞い降りて、「御前を待っていた」といったとしても。
もう僕たちは高校生では、ない。
今までは僕たちは輝かしい失敗を楽しみました。
汗と涙と大失敗を胸に、100点と彼女持ちと現実を笑いました。
でも、それは高校時代のことです。
戻るべき場所を敢えて絶って、過去ではなく未来を見据えなくてはならない。
貴方がどう考えるかは知りません。ただ、私の思うことを述べます。
私には一つの後悔があります。
それは、たった6年しかない青春時代の中でひたすら、何かに対する恐怖をぬぐいされなかったことです。
その恐怖に立ち向かったとしても、打ち勝てはしなかったことです。
俺が何かを、もしくは自分を恐れさえしなかったならば,俺達はもっと遠くまで飛べたでしょう。あなたはきっと私が向かうどんな場所にさえも恐れはしなかったでしょうから。
私がいつも甘ったれたベッドの中に身をうずめていたこと。
自分を守ることを恐れなかったこと。
私が・・・私が恐れてはならぬものを恐れたこと!!
それが私の罪でした。
全てが失敗ではありませんでした。時には私達は成功した。
しかし、全ての思い出に涙がしみこんでいる。そして血が。
最後は結局こうなるんですね。俺達は叶わなかった思いと全ての欲望と願いを込めて全速力で音楽をする。
恣意の通じないその様はまるで運命のようでさえある。
それは音楽と呼べるものではないかもしれない。
狂気にも近く・・・まるで今までの人生そのもののような。
そんなライブにして・・・最後にそんなライブをして。
俺達の全てを終わらせるとしよう。
振り返るつもりはありません。
それが最後の1日となる。
なんだかんだ言ってこの3人は全てのクビキリストも暴君油谷もやりきってきた仲間だから、不足はないだろう。でも名前はクビキリストじゃない方がいいな。うん・・・「糞尿王子」とかどうやろう。「狂ったクルパー」・・・・・
「クルパーズ」なんかいいんじゃない?ふふふ。
では、全ての期待を未来に懸けてまた茨の道に戻りますか。
ここは戦線の真っ只中で、俺達は徒歩で突進する兵士なんだから。
そういえばかつて成功を収めていたある人が、僕に笑いながらいいました。
「マルチたちって自分らに才能があると思ってバンドやってるん?」と。
その時俺は考えた事もない質問にただただ臆すばかりでお茶を濁すにとどまりました。
だが、今なら言えます。
「俺達がやってたのはそんな事じゃない。ただ俺達は自分の実力さえも見計られないほど愚かで直線的で、そして、やらなきゃいけないことをやってただけだった」ってことを。
今、その必要性と重要性がひしひしと感じられるよ。それと素晴らしさと。
ではそろそろ出発の時だ。俺達に残された時間を精一杯過ごそうぜ。
じゃあな。